T様からとても品質のいい桐箪笥の洗い替え修理のご依頼をいただきました。
私どもではどのように傷んだ桐箪笥も洗い替え修理ができますが、今回ご依頼いただきましたT様のお母さまの桐箪笥はとても品質のいい桐箪笥でございました。
私どものような桐箪笥のプロの目から判断できる以外は、誰も桐箪笥には関心や興味のない日本の世の中になってしまいました。
とても残念でたまりません、日本から品質のいい桐箪笥がどんどんほかされています。悲しい現実です。
このような桐箪笥に出会える事は大変嬉しいことです。
少し傷んではいますが、プロのわたしがT様からのお写真をメールで拝見させていただいたら、是非この桐箪笥は洗い修理させていただきたいなぁと思えた桐箪笥です。
表面に使われている桐の柾目の杢目がこの時代にしては非常にバランスのいい前板が使用されています。
永年使用されていても桐箪笥本体の隙間やゆがみがございません。
引手の金具も上品でシンプルな引出し金具が採用されているのもいい桐たんすの特徴でございます。
背板も幅の広い芯持ち(桐の木の中心部分お杢目の総称です)のいい桐材が使われています。
小さな2つの小引出しはプロの呼び方では、夫婦箱と呼びますが、その夫婦箱にもとても粋な金具が使われています。
多分 大阪で作られた桐箪笥です。大阪泉州桐箪笥のような気がします。
この丸い部分はプロの呼び方では、鍵座と呼びます。右にスライドすると鍵穴があらわれて引出し1つ1つに鍵がかけれるようになっています。
でも洗い替え修理をしても、今の錠前とこの鍵座の位置が合わないので、古い桐箪笥は錠前をそのまま付けます、そのため錠前が古いままなので、鍵をかける時に錠前の鍵の引っ掛かりの部分が経年劣化によって壊れてしまう場合が多いので、古い桐箪笥の錠前はかがないでとお願いしています。
鍵無しでのご使用をお願いしています。
この鍵座をよくご覧ください。何気なくみたらただの丸にみえるでしょうが、よく見るとなにやら模様が彫られているでしょう。
そうなんです、ご紋が彫られています。三ツ割桔梗と言うご紋です。
その三ツ割桔梗の交わる部分は石目調に彫られているとてもいい鍵座が付けられています。
このような鍵座は今では職人がいないのでお作りするのも出来ない貴重な鍵座です。
ご覧ください底板の桐材も背板の桐材とおなじく幅の広い芯持ち(桐の木の中心部分お杢目の総称です)のいい桐材が使われています。
やはり昔の桐箪笥の方が今売られている見栄えばかりの桐箪笥とは違う本質のいい桐箪笥です。
人間と同じですね。
中身が違います。
こんな桐箪笥を今回手直し出来る機会を与えていただけてT様ありがとうございます、丁寧にお仕事させていただきます。